2010年5月27日 (木)

白川道【病葉流れて Ⅱ・Ⅲ】

P5090004  今まで白川道の本は、【流星たちの宴】、【海は涸いていた】、【天国への階段】、【終着駅】、【龍の道 飛翔篇】等を読んでいる。

 この本は麻雀に命をかける若者の無謀な話であった。1000頁にも及ぶ話しだが、呆れながらも、あっという間に読み終わってしまった。読みながら、この話は著者のある程度、実話に基づく話なのではないだろうか、と思っている。

 大学生の時から麻雀屋に入り浸り、大学生にはあるまじき無謀な賭け麻雀をしていた。大学生の新卒給料が4~5万円の時代、30万円、50万円をかける麻雀だ。穴があくと、親しい女性に100万円単位で金を借りていた。

 そういう不良学生が大阪の電気会社に就職したが、長く続くはずがない。大阪の麻雀屋から会社に通う生活が続く。しかも徹マン明けで行くので、良い仕事などできるはずもない。

 しかも、50万円、100万円と動く世界で、サラリーマンの5万円の生活など成り立つはずもない。間もなく辞表を出し、会社を辞めてしまった。

 そして、今度は1000万円単位の金の動く麻雀にのめりこむことになる。いかさま、暴力団騒ぎ等何でもある世界だ。

 読んでて全く痛快とは思うものの、私の住む世界じゃないなと思ってしまった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年5月14日 (金)

辻井喬『風の生涯』(上)(下)

P5090001

 辻井喬は気になる小説家の一人である。ただ彼の書くものは大作で、読むのに難渋した記憶だけが残る。

 今までどんな本を読んだのか検索してみると、『方向の季節の中で』『父の肖像』『沈める城』『暗夜遍歴』『終わりからの旅』である。

 本書も、あまり期待して手に取ったわけではない。しかし意に反して、大変面白くあっという間に読破してしまった。

 ご存知のように、辻井喬は元西武の会長堤清二のペンネームである。小説家でもあるが、詩人としても有名である。実業家として多忙を極めているときに、よく小説を書く時間を取れたものだと感心する。

 辻井の小説は、彼の父親堤康次郎を書いたものが一番面白い。彼の生い立ちを、ものすごく否定的に描いている。

 『風の生涯』の主人公は、矢野重也である。あくまでもこれは小説名で、一見して、産経新聞社の社主水野成夫を描いた評伝小説だったと分かる。

 水野成夫のことはぼんやり知っていたが、改めてこの小説を読んでみると彼の人となりがわかってくる。

 そして辻井がこの小説を書く動機も分かってきた。水野は、戦前、共産党の活動家として様々な弾圧の中をくぐってきた。中国に潜伏して、毛沢東や周恩来とも会ったことがあるようだ。

 獄中転向したが、心の中では共産党へのあこがれが絶えずあった。戦後実業家として活躍したが、労働組合の操縦術にすぐれ、経営者団体の組合対策のエキスパートとみなされた。

 これらの話は、戦前と戦後の違いはあったものの、すべてが堤清二のたどった道でもあった。

 最後は鹿内信隆との確執の中で、失意の中で亡くなるまでの大作であったが、この本はあっという間に読んでしまった。

 やはり小説はテーマが大事だ。

| | コメント (0)

2010年5月11日 (火)

村上春樹『1Q84』

0006

 村上春樹『1Q84』のBook3が発売になった機会に、Book1・Book2、それに3巻まで通して読んだ。
 昨年の6月に1巻・2巻が同時発売になった時に読んだのだが、今回再度通して読むと、この小説には、また違った印象を持った。
 この小説は、基本的にはファンタジーだったのだ。ファンタジーという意味は、ある入口があり、その入口から入ると別の世界が登場する物語を言う。
 高速道路の非常階段が、1Q84年に入る入口という設定も面白い。
 ファンタジー作品であるとともに、純愛の恋愛小説という側面もある。甘酸っぱく、悲しくて、やがてはハッピーエンドで終わる。
 主人公の天吾と青豆は物語が始まる時点では、相当遠い距離だった。それが、小説の進行とともにだんだん近づいてくる。そのハラハラドキドキが、村上の小説が上手だと感じさせた点だ。
 それにしても、村上はオウム真理教の事件を彼の作品『アンダーグラウンド』で丹念に研究した跡が読み取れる。
 このゴールデンウィークを通して読んでいたのだが、やはり、村上春樹を読んでいると、わが心もハッピーになるのが良い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月15日 (月)

船戸与一『藪枯らし純次』

003  船戸与一『藪枯らし純次』(徳間書店)2008年1月31日

 私には、この作家の本は目につく限り全部読もうと決めている人が何人かいる。船戸与一もその一人である。彼は多作な作家であるが、代表作と呼ばれている小説はほとんど読んでいると思う。
 彼に嵌った最初の作品は『砂のクロニクル』である。ある意味で彼の小説は、「冒険小説」と呼べるジャンルかもしれない。さまざまな国を舞台に活躍する主人公を読み、ある意味ではゴルゴ13を思い出すかもしれない。
 本書はその中でも異色な作品であった。日本を舞台にした現代作品だ。
 「藪枯らし」とは、あるものに取り付いたらトコトンしゃぶり、本体を枯らしてしまうことをいうらしい。言ってみれば、貧乏神だ。
 主人公純次は生まれ故郷、赤猿温泉郷に帰って来た。その純次を見張るために、探偵を職業に持つ高取圭介が派遣された。見張るといっても、ぶらぶらしているだけの仕事だった。
 その蔭に、ある壮大な計画が隠されたあいたのだ。
 結局、悪者純次が高取と協力してその陰謀と戦う羽目になるという長大小説だった。
 600ページにわたる話だったが、あっという間に読んでしまった。船戸は飽きずに読ませる作家だとつくづく思う。

| | コメント (0)

2010年2月14日 (日)

白石一文『どれくらいの愛情』

004   白石一文『どれくらいの愛情』(文藝春秋)2006年11月15日初版

 最近、白石一文に嵌っている。ご存知のように、白石一文は今年、本書で直木賞を受賞した作家である。
 彼の経歴が面白い。彼は一時文藝春秋社の社員であった。40歳過ぎに一念発起し、社をやめて作家生活に入ったという。『一瞬の光』ででデビューし、注目を浴びた。そして、本書が彼の9作目の作品となる。
 私は今まで彼の作品で、『一瞬の光』『不自由な心』『永遠のとなり』などを読んできている。本書を読んで、白石は本当にストーリーの運びが上手になってきたなと感動した。いずれも恋愛小説である。
 本書には4つの中編・長編が収められている。なかでも、「20年後の私へ」の短編が良かった。作家の素直な気持ちが表現されていて、心の中がすっきりした。自分の心に正直に生きようとする女性の話だ。
 この作品の続編に『もしも、私があなただったら』という小説があるようだ。これも読んでみよう。

| | コメント (0)

2010年2月 1日 (月)

伊佐千尋『オキナワと少年』

006  伊佐千尋『オキナワと少年』(講談社)2006年11月30日初版

 伊佐の本は30数年前に『逆転』を読んだような気もするが、記憶は定かではない。
本書は、伊佐の自伝的な小説だった。
 彼のお父さんはお医者さんで各地を転々としていた。伊佐も、学校の転校を余儀なくされていた。
 戦争末期、お父さんの生まれ故郷沖縄への転校をした。
 はじめなじめなかった沖縄も、徐々に少年の心を開くようになった。ただ学校は遠く、電車と歩いて通う生活で、ほとんど自宅学習は出来なかったようだ。それでも少年は成績優秀で、将来はお父さんのように医者を目指した。
 段々戦争が激しくなり、沖縄からお母さんの実家のある甲府に避難することになった。甲府では腰を落ち着けて勉強できるかと思っていたら、工場への勤労奉仕が待っていた。
 川崎の工場に行ったのだったが、そこでも空襲が激しく逃げ惑う日々だった。結局少年の志とは違い、戦争末期、落ち着いた勉強は出来なかった。
 終戦後、沖縄に住むお父さんは消息不明だった。祖父母の待つ沖縄に一家で帰ってみたのだが、そこは全くの廃墟だった。
 沖縄では、一人、祖父母の実家を出てたくましく生きていった。戦後の彼の生き様も、感動的であった。

 戦争と沖縄体験に翻弄された著者の貴重な体験は、ずしりと思いモノがあった。沖縄モノは結構読んではいるが、体験を通しての小説というのに出会ったのは初めてだ。
 大変心を打つ話であった。もちろん、評価はAである。

| | コメント (0)

2010年1月27日 (水)

城山三郎『本当に生きた日』

007  城山三郎『本当に生きた日』(新潮社)2007年5月25日

 城山が亡くなったのは、2007年3月22日だから、死後2ヵ月後に出た作品だ。
 私は結構城山の本は読んでいるつもりだ。
今「読書日録」を繙くと、城山の本を読んでいたのは10年ほど前になる。『勇気堂々』『男子の本懐』『落日燃
ゆ』『官僚たちの夏』等々だ。
 城山を経済小説の草分けと評する向きもある。一時は夢中になって読んだような気もする。
 今回の小説も、本格的な硬派を期待して手に取った本だ。
 しかし、晩年の作としては駄作の部類に入る作品ではないだろうか。はっきり言って、読んで詰まらない本だった。設定も陳腐だったし、登場人物にも魅力ない。さらには、ストーリー展開も「なんじゃこれは」という感想だ。
 城山は、晩節を穢したようだ。ザンネン!!!

| | コメント (0)

佐伯泰英『テロルの季節』

003 佐伯泰英『テロルの季節』(KKベストセラーズ)2005年8月7日初版

 佐伯泰英の作品を読むのは初めてだ。
 彼は今や絶好調の売れっ子作家になっている。どうやらこの小説は、彼が売れっ子になる前の初期作品のようだ。『白き幻影のテロル』に手を加えた作品だという。
 本人があとがきで述べているが、この作品は「時代小説」を書くための基礎となった小説だという。
 それにしても、自分にはわかりにくい話だった。舞台はスペインで、暗殺に明け暮れる日本人テロリストと彼を追う元警視正の息が詰まるような死闘の話だ。
 しかし、この手の小説にはいつもそうなのだがゲンナリしてしまう。虫けらのように人を殺し、殺されてゆく。果たしてこういうことって、そんなにあることなのだろうか。あまり安易な人殺しに説得力はない。
 スペインを舞台にした話では、わたしは逢坂剛が大好きだ。彼のストーリィには迫力があったが、どうしても私は佐伯のこの手の小説が好きになれなかった。

| | コメント (0)

2010年1月21日 (木)

大沢在昌『欧亜純白 Ⅰ Ⅱ』

005

大沢在昌『欧亜純白―ユーラシア・ホワイト―(上)(下)』(集英社)2009年12月20日新刊

 本書は上下巻あわあせて1100ページに及ぶ大作だった。私は、どんな大作をも苦にしないタフさがある。むしろ長編であればあるほど、楽しみが長続きするので嬉しい。
 いつも言っているのだが、大沢在昌はストーリーテラーとして天下一品だ。これだけの長編にも拘らず読者を飽きさせないし、物語に綻びを見出せない。
 しかもテーマが、ヘロインの麻薬である。私自身、なぜこれだけ反社会的と叫ばれている麻薬が世の中からなくならないのか、ずっと不思議に思っていた。この小説は、その疑問への回答にもなっていたのではないか。
 「麻薬は金や貨幣とは違う意味での世界通貨」と著者は喝破している。なるほどね、と納得させる内容の本だ。
 大麻系の樹脂麻薬は日本で流通するが、ヘロイン系は世界の流通に比して日本が圧倒的に少ないという。その流通の少ないヘロインを日本を経由してアメリカに運ぼうという計画が、日本で一番の暴力団のトップで密かに進んでいる。
 その計画に待ったをかけようとする日本の麻薬Gメン、アメリカと中国の警察官の共同作戦だ。
 麻薬組織も国境を越えた動きのなかで謀略が渦巻き、それを防止しようとする警察組織にも膨大な犠牲者が出た。
 息つかせぜに読ませる小説だった。イヤ、読んだねという満足感が残った。

| | コメント (0)

2010年1月15日 (金)

桜庭一樹『私の男』

004 桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)2007年10月30日初版

 桜庭の本を読むのは初めてだ。私に勧めてくれた方は、「桜庭は面白い」と言っていた。好奇心旺盛な私は、特に今まで読んだことの無い作家を読むのを楽しみにしている。
 一体どういう考えの作家で、どういう物語展開になるのか、話の作りかたが上手か下手か、さらには私を納得させてくれるのか、初めて読む作家にはさまざまな疑念を抱く。
 大体100ページ読んで物語が展開していかない作品は失敗作、と思って間違いないと決め付けているところが私にはある。
 桜庭の『私の男』は、一体どういう作品だったのだろうか。今まで読んだこともないストーリーだ。
 北海道の奥尻島で起きた「北海道南西沖地震」で父と母、兄弟をすべて亡くして孤児になった主人公花と、その後見人腐野淳悟の話だ。花9歳のときにその地震があった。
 従兄弟でもある淳悟は一人ボッチになった花の親になりたいという。そのとき、淳悟は25歳である。花も淳悟の思いを受け入れた。そして、不思議な二人の生活が始まる。
 物語の展開は、現在から過去にさかのぼって語り継がれるという小説の作り方だ。それによって、後半に行けば行くほど効果的になっていくという、なるほど考えたなという、面白い手法だ。新鮮さを感じた。
 ただ、桜庭一樹という作家はこれだけではわからないな、と思った作品である。

| | コメント (0)

«馳星周『弥勒世 (上)(下)』